大津のいじめ自殺事件
これまでも、いじめが原因で自殺をするという事件は数多くありましたが、
これほど大きな問題になったことはありませんでした。
亡くなったお子さんのご両親、ご兄弟、ご親族、お知り合い、お子さんと関わっていたすべての方々の悲しみや怒りは、計り知れないものがあると思います。
今回の事件がこれまでの事件と大きく違うことは、
全校生徒に対するアンケートがあり、しかもそのアンケートの中に、
いじめがあったことを示唆するものが多くあったということだろうと思います。
学校や教育委員会は、アンケートの記載内容を疑っているようなコメントを出していましたが、
ここに来て、やっとアンケートの公開に踏み切り、
警察の捜査も入ったことで、その信憑性も徐々に明らかになってくると思います。
ニュースやワイドショーも連日大きく報道していて、
在校生への影響も避けられない状況になってしまいました。
この事件を考えると、「いじめ」あるいは「暴行」という直接的な問題の他に、
学校と教育行政の抱える根本的な問題が見えてきます。
それは、私が折に触れ述べてきたことですが、
現場を管理監督するはずの行政機関の構成員が、現場の人間であるという構造的な問題が、
根本にあるということです。
先日、尾木直樹氏が語っていたのですが、現場の教員の序列化、縦並びということも、影響していると思います。
私の子どもがまだ公立の学校に通っていたころ、
校長の対応があまりにひどく、学校への対応だけでは、対処しきれないことがありました。
やむなく教育委員会と話をすることになり、委員会へ電話をすると、
返ってきた答えが「校長の管理はできないんですよ」でした。
この回答をしてくれた委員会の方は、私が教育行政に精通していると思ったのか、
とても正直に答えてくれたんです。
妻は教員、妻の両親も妹も教員、妻の祖父は教育長、私の父も教育次長ですから、
はったりや脅しが利くとは思わなかったんでしょう。
多くの教育委員会は、
教員の中で管理職試験に受かった者を委員会の指導課の主事として引き上げる。
しばらくして、どこかの学校に教頭の空きが出ると教頭として現場に戻す。
その後は教頭から校長になる者もいれば、さらにもう一度委員会の主事に戻し、
たま現場に校長として戻される。
校長として退職することがほとんどだから、委員会の主事は現場の校長の後輩ということになる。
教育行政はそんな構造で成り立っているところがほとんどだから、
委員会の主事は、自分の将来を考えたら自分の先輩である現場の校長の指導などできるわけがない。
PTAの三役などを引き受けたことのある方は、学校行事の折りに訪れる教育委員会の主事が、
やたらと校長にへこへこしているのを見たことがあると思います。
その裏には、そんな構造があるんですね。
もちろん、そういった構造の中で苦しめられているのは、
事件の被害者ばかりでなく、委員会の主事や校長、教頭もだろうと思います。
事実が解明されたとは言えない震災で多くの児童が亡くなった大川小学校の問題も同じようなことですね。
誰のための教育行政、誰のための学校なのかということを改めて考え、
被害者、被害者の周囲の方々、加害者の将来のためにも、真相を明らかにしてもらいたいものです。
by 大関直隆
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